家の基礎は全部で5種類ある!それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説
住宅そのものを支える基礎は「家の耐久性」を考える上で最も重要な部分です。家のすべてを支える基礎が弱っていれば、家の頑丈さや耐久性が下がります。
住宅の寿命を長く保つためには、基礎補強を行うと効果的です。なお、基礎の種類によって家の寿命や基礎補強の費用が変わってきますので詳しくご紹介します。
そもそも家の基礎とは?
家の基礎とは「建物を支える土台」のことです。この土台の工事を「基礎工事」と呼びます。
基礎は家の寿命を左右する大切な部分です。そのため、基礎工事の際には、必ず地盤調査も行います。地盤に問題があると、耐久性・耐震性の高い家を建てることができません。
例えば、泥や水を多く含んだ土や砂の地盤は柔らかいので、家を建てるのには適していません。もし、この状態で家を建ててしまうと、地盤沈下を起こし、基礎に亀裂が入ったり、家が傾いたりする可能性があります。
そのため、軟弱な地盤の場合は、杭を打つなどの地盤改良工事が必要になります。これらの対策をしっかり行い、家の土台を作れば、頑丈で何十年も安定した住宅になります。
なお、現在の日本では「ベタ基礎」と「布基礎」のいずれかの住宅が多く見られます。近年では、ほとんどの住宅で「ベタ基礎」が採用されています。
家の基礎は全部で5種類
家の基礎は主に5種類あります。それぞれの基礎の特徴を詳しく見ていきましょう。
1.ベタ基礎
ベタ基礎とは、全体がコンクリートで覆われている基礎です。家を「面」で支えるため、建物にかかる力を基礎の全面で地盤に伝えます。コンクリートの使用量は多くなりますが、掘削工事や型枠は少ないので施工は難しくありません。
2.布基礎(ぬのきそ)
布基礎とは、外壁や柱といった主要な部分にだけ作られる基礎です。家を複数の「点」で支えます。基礎の面が小さいため、地盤の強度が大きい土地で採用されるのが一般的です。布基礎は古くからある工法で、主に木造住宅で採用されています。
3.深基礎(ふかぎそ)
深基礎とは、他の基礎よりも深さがある基礎です。地面に高低差がある場合や、地下室を作るときなどに採用されます。一般的な基礎の場合、地面に食い込む部分は30cm前後ですが、深基礎は75cmほど食い込むこともあります。
4.杭基礎(くいきそ)
杭基礎とは、地盤沈下地帯や、液状化現象を起こしやすい土地に用いられる基礎です。基礎が浅いと軟弱な地盤の建物を支えられないので、杭を打ちこんで強度を高めます。杭基礎だけを採用するケースは少なく、布基礎やベタ基礎などの下に設置するのが普通です。
なお、杭基礎は「支持杭(しじぐい)」と「摩擦杭(まさつぐい)」の2種類に分かれます。
支持杭は地盤の硬い箇所まで杭を打つ基礎で、弱い地盤に使われます。一方、摩擦杭は、硬い地盤まで杭を打つのが難しい場合に採用されます。
5.独立基礎
独立基礎とは、主な柱の下の部分にだけ作られる基礎です。地盤の強度が大きな土地で採用されます。住宅の基礎として使われることは少なく、玄関ポーチやデッキなどに使われるのが一般的です。
基礎のメリット・デメリット【5種類】
ここからは、基礎のメリット・デメリットを種類別に紹介していきます。
ベタ基礎のメリット・デメリット
ベタ基礎は家を「面」で支えるため、基礎の負荷が分散して耐震性が高くなるというメリットがあります。湿気やシロアリ被害にも強いのが特徴です。木造住宅は湿気が家の劣化を早めるため、ベタ基礎を採用すれば家の耐久性を高められます。
ただし、ベタ基礎はコンクリートの使用量が多く、他の基礎に比べると工費が高くなります。
また、ベタ基礎だからといってシロアリ被害に遭わないとは限らないため、シロアリ対策は必須です。シロアリが侵入できる程の僅かな隙間や、経年劣化によるヒビ割れがあればシロアリは床下に侵入してきます。
布基礎のメリット・デメリット
布基礎はコンクリートの使用量が少ないため、工費が安いというメリットがあります。家を「点」で支えるため、耐震性は低めですが、ベタ基礎よりも部分的な強度を高めることは可能です。
ただし、地面からの湿気が上がりやすく、シロアリやカビなどの被害も発生しやすくなります。
深基礎のメリット・デメリット
深基礎が擁壁(ようへき)を兼ねる場合は土留めが短くなるので、工費が軽減されます。水害に強いのも深基礎のメリットです。
しかし、地下水脈があると床下の湿度が高くなり、シロアリなどの害虫が発生しやすくなります。
杭基礎のメリット・デメリット
強度を高めるために採用される杭基礎は、家の沈下や地震発生時の家屋の傾斜を防ぎます。
ただし、軟弱な地盤が深い層に達している場合は長い杭が必要になるため、その分費用がかさみます。
独立基礎のメリット・デメリット
独立基礎は他の基礎に比べるとコンクリートを使う部分が少なく、低コストで施工できます。
その一方で、部分的に負荷がかかるというデメリットがあります。独立基礎を採用できる場所は限られ、他の基礎に比べて耐震性も低めです。
ベタ基礎と布基礎で迷ったときの選び方
住宅の基礎工事で「ベタ基礎」にするか「布基礎」にするか迷ったときは、以下の表を参考にしてください。
ベタ基礎と布基礎では特徴やメリットに一長一短がありますが、「構造の安定性」や「床下の湿気・シロアリの遮断」は家の寿命にも関わってくるポイントなので重視すべきでしょう。
コスト面では布基礎の方がお手頃な価格です。ただし、現在はベタ基礎も普及しており施工費用が下がってきていますので、見積りを取って費用を比較するのがおすすめです。
ベタ基礎 | 布基礎 | |
---|---|---|
コスト | △ | ◎ |
構造の安定性 | ◎ | △ |
施工のしやすさ | ◎ | ○ |
湿気・シロアリの遮断 | ○ | △ |
地盤が弱い場合は改良工事が必要
住宅を建設する土地の地盤が弱い場合は、基礎工事の前に地盤を補強しなければいけません。補強をしないで家を建てると地盤沈下が起こり、建物が倒壊する可能性もありますので注意が必要です。
・地盤改良工事の種類
地盤改良工事の工法は、主に3種類あります。
1.表層改良
2.柱状改良
3.鋼管杭
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.表層改良工法
軟弱な地盤の深さが2m以内の場合に採用される工法です。軟弱な地盤にセメント系の粉体固化材を混ぜて、硬く安定した層を形成します。作業効率が高いため、小型の重機でも施工が可能です。
ただし、急勾配での施工は難しく、施工者の技術によって仕上がりが左右されるというデメリットがあります。
2.柱状改良工法
柱上の建材を打ち込んだり、セメントミルクや天然石を打ち込んだりして土の密度を高める工法です。軟弱な地盤が深さ2m~8m以内の場合に採用されます。地盤の強度を維持できる年数が長く、不同沈下の対策としても有効です。
3.小口径鋼管杭工法
軟弱な地盤の深さが8m以上に達する場合に採用される工法です。強い地盤に届くまで鋼の杭を垂直に打ち込んでいきます。柱状改良工法よりよりも小型の重機で施工でき、工期も短めです。改良工事後の強度は高く、土地の資産価値もほとんど低下しません。
ただし、「費用がかかる」「施工中の騒音が大きい」などのデメリットがあります。
基礎工事の進め方とは
次に、基礎工事の工程を解説します。
(1)地縄を張る
土地のどこに建物が建つのか、縄やロープで印を付けます。
(2) 根切りをする
パワーショベルなどの重機を使い、基礎の高さまで土を掘ります。
(3) 砕石を入れる
細かく砕いた、砕石と呼ばれる石で敷地全体を敷き、地盤を固めます。
(4) 防湿シートを敷いてコンクリートを流す
砕石で地盤を固めた上に防湿シートを敷き、コンクリートを流します。これは建物を建築する位置を間違えない印です。コンクリートが乾いたら、基準線を引きます。
(5) 鉄筋を組む
建物を建てる位置で、鉄筋を組みます。
(6) 外周の型枠を組む
基礎の外周に型枠を組み、固まっていないコンクリートを枠の中に流しこみます。
(7) 基礎内部の型枠を組む
ベース部分のコンクリートが乾いたら、内部の型枠を組み、固まっていないコンクリートを枠の中に流しこみます。
(8) 型枠を外して仕上げる
コンクリートを型枠に流し込んでから固まるまで、急激な温度変化や風雨、直射日光から保護し、十分な強度が確保できるまで保護したら、型枠を外します。その後、仕上げでコンクリートを打設したり、無駄なコンクリートを除去したりします。
(9) 基礎の完成
基礎の完成です。完成するまで通常は1ヶ月半かかります。
まとめ
今回は、基礎の種類や地盤改良工事などについてご紹介しました。基礎にはそれぞれにメリットとデメリットがあるので、コストや立地、施工面積などを考えながら、最適な基礎を選ぶようにしましょう。
地盤が軟弱な場合は、基礎工事の前に地盤改良を行う必要があります。軟弱な地盤の深さによって工法や費用は変わってくるので、専門の業者と相談しながら、長持ちする家の基礎作りを検討してみてください。