基礎塗装は本当に必要?住宅の劣化を防ぐ方法とは
家の外観を整えるために「基礎塗装」を検討している方へ。基礎塗装は外観を美しくする一方で、誤った方法で行うと基礎の劣化を引き起こす可能性があります。塗装を始める前に、以下のポイントに注意することが重要です。
本記事では、次の内容について詳しく解説します。
- 基礎塗装の必要性
- 事前準備として行うべきこと
- 基礎塗装の費用相場
基礎塗装をお考えの方は、ぜひご参考ください。
そもそも住宅の基礎とは?
住宅の基礎とは、建物と地面の間にあるコンクリート部分ことです。なお、基礎には、主に次の2種類があります。
ベタ基礎
ベタ基礎とは、建物の底全体をコンクリートで覆うように作られた基礎です。建物の下に大きなコンクリートの板を敷いた状態をイメージするとわかりやすいでしょう。
ベタ基礎は床に湿気が伝わりにくいため、シロアリやカビに強いという特徴があります。断熱性能も高く、冬場の寒さを軽減する効果が期待できるのもメリットです。
布基礎
布基礎は、ベタ基礎のような「面」ではなく「点」で住宅を支える基礎です。建物の重量を効率的に支えるように設計されており、必要な場所だけコンクリートを使用するため、コストを抑えられるという特徴があります。
ただし、安定性や耐久性はベタ基礎に劣ります。地盤が軟弱な場合や、地震の影響を受けやすい地域では、補強が必要になるケースも少なくありません。
住宅の基礎の役割とは?
基礎には、建物の重みを支えるという大切な役割があります。また、地震や強風などによる外的な力を地盤に伝えて、住宅が倒壊するのを防ぎます。
基礎が劣化すると建物の重みや外的な力に耐えきれず、住宅の倒壊を招くことがあるので注意が必要です。
基礎補強や塗装が必要になるタイミング
基礎の補強と塗装が必要になるタイミングは、次の4つです。
- 剥がれが生じたとき
- ひび割れが発生したとき
- 汚れが目立つとき
- 内部の腐食が確認されたとき
それぞれ詳しく見ていきましょう。
剥がれが生じたとき
住宅の基礎に剥がれが生じた場合は、早急な塗装や補強が必要です。基礎の剥がれは見た目の問題だけでなく、耐久性にも影響を及ぼす可能性があります。剥がれが起こる原因は、経年劣化や気温の変化、湿気の影響などです。
小さな剥がれであっても、放置すると徐々に範囲が広がり、最終的には基礎全体の強度低下につながる恐れがあります。基礎の剥がれを発見したら、専門業者に相談して程度や原因を確認しましょう。
軽微な剥がれであれば、表面を清掃・補修したうえで塗装します。しかし、広範囲に及ぶ剥がれや、繰り返し発生する剥がれの場合は、基礎の補強をしてから塗装をする必要があります。
ひび割れ
基礎のひび割れは、建物の沈下や地震、温度変化によるコンクリートの膨張・収縮などさまざまな要因で生じます。細かいヘアクラックと呼ばれるものから、大きなひび割れまで程度はさまざまです。
基礎にひび割れを発見したら、幅や長さ、深さ、進行の速度などを確認しましょう。0.2mm以下の小さなひび割れであれば経過観察で済む場合もありますが、幅の広いひび割れや、進行が速いものは基礎を補強したうえで塗装しなければいけません。
ひび割れを放置すると水分が侵入し、鉄筋の腐食や基礎の強度低下を引き起こす恐れがあるので注意しましょう。
汚れ
経年劣化による汚れや雨染みを放置しておくと、カビやコケの原因になることがあります。美観も損ねるので、定期的な清掃と塗装による保護は欠かせません。
基礎の汚れは見た目の問題だけでなく、長期的な基礎の劣化につながる可能性もあるため、適切な対応が必要です。汚れの原因としては、雨水の跳ね返りによる泥はねや、藻やカビの発生、汚染物質の付着などが挙げられます。
汚れで基礎の状態を把握しづらくなり、トラブルを見逃す恐れもあるので早めの対策が必要です。軽度の汚れであれば水と中性洗剤を使って洗えば除去できます。しつこい汚れや広範囲に及ぶ汚れは、高圧洗浄機の使用や専門業者による清掃を検討するといいでしょう。清掃後は、必要に応じて撥水性のある塗料を塗り、将来的な汚れの付着を防ぎます。
内部の腐食
雨水や空気中の二酸化炭素は、コンクリートのカルシウム化合物と反応して「コンクリートの中性化」を起こします。中性化が進行すると、基礎内部の鉄筋に錆が生じて強度が低下してしまうのです。
錆びた鉄筋が膨張した場合は、基礎表面にひび割れを引き起こします。それでも放置しておくと、膨張した鉄筋が外部に露出する「爆裂現象」につながります。
基礎コンクリートの表面にサビ汁が発生している場合は、内部の鉄筋が腐食している可能性があります。内部の腐食は塗装だけでは対応できないので、専門業者に調査を依頼したうえで適切な基礎補強を行ないましょう。
基礎塗装のメリット
外観がキレイに整う
基礎塗装を行えば、住宅の外観がキレイに整います。時間の経過とともに基礎部分は雨や日光の影響で変色したり、汚れが付着したりして見栄えが悪くなることがあります。
しかし、適切な塗装を施せば、新築時のような美しさを取り戻すことも可能です。基礎の色を統一して塗装をすれば家全体の印象が引き締まり、外観の調和にもつながるでしょう。
防水性が高まる
コンクリートは水分を含みやすく、温度の変化にも弱いという性質があるため、基礎塗装をすれば表面を保護すると劣化の防止が期待できます。塗装する際には、防水性の高い塗料を使うことが大切です。
基礎から侵入した水分は床下の湿気を高める原因となり、木材の腐朽やカビの発生を引き起こす可能性があります。また、内部の鉄筋の錆びを促進し、構造的な問題につながる恐れもあります。基礎塗装による防水性の向上は、このような問題を未然に防いで、住宅全体の寿命を延ばすためにも役立ちます。
シロアリの被害を防ぎやすい
基礎塗装によってコンクリートの防水性が高まれば、湿気を好んで集まってくるシロアリ被害も防げます。シロアリ被害は発見が遅れると修復に多大な費用がかかる可能性があるので、長期的に見ても大きな経済的メリットがあるでしょう。
ただし、完全なシロアリ対策には追加の防蟻処理や木材保護も必要です。基礎の塗装と合わせて、複合的な対策をとるようにしましょう。
基礎塗装のデメリット
内部の劣化に気づきにくくなる
基礎塗装によって外観はキレイになりますが、基礎内部の劣化に気づきにくくなるというデメリットがあります。
たとえば、コンクリートの内部で進行している中性化や鉄筋の腐食といった問題は、表面の塗装で外から判断しづらくなります。微細なひび割れや、湿気の侵入といった初期段階の問題も隠されてしまう可能性があるでしょう。
基礎塗装を行う際は、事前に専門業者による点検を行ない、内部の状態を確認することが大切です。定期的に点検を実施して、内部の状態に注意を払う必要もあります。
保護できる期間が短い
雨水などの跳ね返りによる汚れは日常的に発生するため、美観を保つには定期的な基礎塗装が必要です。一般的に、基礎塗装の効果は7年から10年程度と言われています。
ただし、地面に近い部分は水はねや土の跳ね返りの影響を受けやすく、塗装の劣化が早く進む傾向にあります。基礎塗装を行った後も、定期的なメンテナンスや再塗装は不可欠です。
塗装が剥がれる心配がある
時間の経過とともに塗装が剥がれる心配もあります。使用する塗料の品質や環境条件などによっては、早く剥がれることもあるので注意が必要です。
剥がれを防ぐためも、高品質な塗料の使用と適切な施工を行ないましょう。定期的に点検を行ない、剥がれの兆候が見られた場合は早めに補修することも大切です。
基礎塗装のポイント
効率的に基礎塗装をするためにも、次の2点を確認しておきましょう。
- 基礎塗装をするなら基礎補強の後に!
- 外壁や屋根の塗装もまとめて点検してもらう
それぞれ詳しく解説していきます。
基礎塗装をするなら基礎補強の後に!
基礎を長持ちさせるためには、「基礎の補強工事」をした後で塗装をして、耐震性と見た目の維持を両立させることが大切です。
どんなに見た目がキレイでも、基礎コンクリートの内部が劣化していると強度がどんどん弱まっていくので注意しましょう。
外壁や屋根の塗装もまとめて点検してもらう
外壁や屋根の塗装は10年に1度実施するのが良いとされていますが、基礎に使う塗料の効果も7~10年前後で切れるため、合わせて点検してもらうのがおすすめです。
外壁や屋根と同時に塗装すれば費用や工期を抑えることができ、住宅のメンテナンスも1度で完了します。
基礎塗装に使う塗料の種類
基礎塗装はDIYでも可能です。最近は、ホームセンターなどで基礎専用塗料も発売されています。主な基礎塗料の種類を見ていきましょう。
日本ペイント「水性シリコン透湿ガード」
コンクリートの吸水を防ぎながら、通気性もキープできる基礎専用塗料です。塗装後はシリコンとフッ素が保護膜を形成するため、コンクリートの劣化も防げます。
遮水効果と超薄膜化によって、ふくれ・剥がれの心配がありません。中性化防止効果と、優れた防藻・防かび力も備えています。
エスケー化研「ベースプロテクト」
アクリルシリコン樹脂が高い耐久性を実現する基礎専用塗料です。微弾性なので、クラックを埋めることもできます。
また、透湿性能によってコンクリート内部の湿気を逃がしつつ、外部からの水分の浸入を防いで基礎を長期間守ります。防かび・防藻性も高いため、住宅の基礎部分をキレイに維持しながら保護したい人に適した塗料です。
アステックジャパン「ベースガード」
耐用年数12年のポリマーセメント系基礎専用塗料です。クラックを補修する弾性だけではなく、コンクリートの劣化を防ぐアルカリ性も有しています。
防水性能も高く、基礎部分を雨水や湿気からしっかり守ります。コンクリートのひび割れを抑える塗膜を形成して劣化を防ぐのも特徴です。塗布後の仕上がりも滑らかで、美観を維持しながら住宅の基礎を保護できます。
基礎塗装は専門業者への依頼がおすすめ
ご自分で基礎を塗装する場合には、下地処理として最低でも次のことを行なう必要があります。
- 塗装する部分の洗浄
- 塗装する部分の洗浄
- キレイに仕上げるための養生
どの工程も手間がかかるため、ご自分での基礎塗装は、あまりおすすめできません。洗浄や補修が不十分だと、塗装に失敗する可能性もあります。基礎の塗装は正しい手順や材料を使う必要があり、ある程度の技術と時間も求められます。
思わぬトラブルを防ぐためにも、基礎塗装は初めから専門業者に依頼しましょう。特に、防水性を高めたい場合や大きなひび割れがあるときはプロに頼むと安心です。
基礎塗装や基礎補強工事の相場は?
ここからは、「基礎の塗装」と「基礎の補強工事」の費用相場をご紹介していきます。
基礎塗装の費用相場
補修箇所や基礎の状態によっても変わりますが、基礎塗装の費用相場は以下を目安にしてみてください。
基礎塗装の費用相場 | 1㎡あたり:3,500円~5,000円 |
作業内容 | ・下地処理 ・高圧洗浄 ・塗装 ・養生撤去 ・清掃 |
基礎補強工事の費用相場
基礎の補強工事には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴と一般的な費用相場を見ていきましょう。
ビックス工法
ひび割れにエポキシ系樹脂を注入して補修する方法で、規模の小さい細かいクラック補修に使われる工法です。基礎表面に生じたひび割れの補修としては、簡易的な方法になります。費用相場は1カ所につき1~2万円です。
Uカット(Vカット)シール工法
幅が広い大きなひび割れの補修に用いる方法です。専用工具でひび割れをU字型(V字型)にカットしてシーリング材を充填します。費用相場は1カ所につき1~2万円です。
アラミド繊維シート補修
コンクリート補修用シート「アラミド繊維シート」で基礎を補修する方法です。多層構造で強靭なアラミド繊維シートに貼付し、クラックが発生している基礎も強固にします。費用相場は、材料費と作業費込みで1.5万〜2.5万/㎡です。
基礎増し打ち補修
既存の基礎の隣に新しい基礎を組み、一体化させる方法です。工費の相場は6~8万円/㎡です。
基礎塗装専門業者の選び方
基礎塗装専門業者の選ぶ際には、次の2点に注意しましょう。
- 実績豊富な業者に依頼する
- 信頼できる業者を選択する
それぞれ詳しく解説していきます。
実績豊富な業者に依頼する
基礎の塗装実績が多く、種類豊富な塗料を扱っている業者を選択しましょう。基礎塗装の実績が少ない業者は適切な補修と塗装ができません。完成度の高い基礎塗装をしてもらうためにも、料金の安さだけではなく、過去の実績を必ずチェックしてください。
信頼できる業者を選択する
業者を利用した人の口コミをチェックして、信頼度を確かめることも大切です。ただし、業者のホームページに掲載されている口コミは「自作自演」の可能性もあるため、他の媒体に掲載されている口コミを確認しましょう。
なお、ホームページに掲載されている施工例などに業者のスタッフが写っていない場合は、フリー素材などを使った「架空の実績」である可能性があるので気をつけてください。
まとめ
今回は、基礎塗装の必要性や注意点、費用相場について詳しくご紹介しました。
基礎は建物全体を支える重要な部分であり、その耐久性を維持することが求められます。見た目だけを重視して塗装すると、内部の劣化に気づかず、深刻な問題に発展する可能性があるため、注意が必要です。基礎塗装は、必ず基礎の補強工事を済ませてから行うようにしましょう。
さらに、自己判断で基礎塗装を行うと、かえって基礎の劣化を進める恐れがありますので、プロに依頼することが強く推奨されます。基礎塗装の費用相場は1㎡あたり3,500円~5,000円で、工期は通常1日から2日程度です。
基礎塗装を検討する際には、まず複数の専門業者に見積もりを依頼し、費用やサービス内容を比較することから始めると良いでしょう。