床下浸水と床上浸水の違いとは?浸水原因や対処方法を詳しく解説

豪雨や台風による床下浸水の被害をニュースで目にする事が多くなりました。実際に被災された方もいるでしょう。床下浸水には保険が適用されるケースもありますが、床下浸水とはみなされず適用の対象外となることもあります。

そこで本記事では、「どこからが床下浸水になるのか」について詳しく解説していきます。さらに、床下浸水後の処理方法やおすすめの対策グッズも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

床下浸水とは?

床下浸水とは「床上浸水に至らない程度に浸水したもの」と、消防庁の「災害報告取扱要領」に定義されています。なお、床下浸水は災害だけでなく普段の生活でも起こりえます。

床下浸水の主な原因は以下の通りです。

  • 配管からの水漏れ
  • 雨水の侵入
  • 結露

給水管や排水管などの配管から水漏れが起こり、床下が浸水してしまうケースがあります。また、雨水が外壁の内部に入り込んでしまったり、基礎コンクリートの継ぎ部から、雨水が入り込み、浸水に繋がったりすることもあります。

その他にも、基礎断熱を施している住宅で、換気不足による「結露」から、床下浸水に発展するケースもあります。

・「床下浸水」と「床上浸水」の違い

住宅はすべて同じ高さで建てられているわけではないため、国土交通省では、浸水域の地面から水面までの高さを指す「浸水深」が床上浸水と床下浸水の違いを判断する目安としています。

浸水深(浸水域の地面から水面までの高さ)浸水程度の目安
0~0.5m床下浸水(大人の膝まで浸かる)
0.5m~1m床上浸水(大人の腰まで浸かる)
1.0m~2.0m床上浸水(1階の軒下までの浸水)
2.0m~5.0m床上浸水(2階の軒下まで浸水)
5.0m~床上浸水(2階以上の屋根などが浸水)

ただし、上記は一般家屋を想定しているため、物件によって判断基準が異なることもあります。

床下浸水は火災保険で補償される?

床下浸水が起こった場合、「火災保険」の「水災保証」が適用されます。水災保証とは、台風、暴風雨、豪雨などによる「洪水」「土砂崩れ」「高潮」がおこった際に、適用される保険内容です。

火災保険加入時に、保険対象を建物のみ、家財のみ、建物と家財の3つの中から選びますが、契約時の選択で、どこまで保証されるかが変わってきます。もちろん、保険会社にとって被害認定と対象となる建物、家財が異なるため、万が一に備えてよく内容を吟味しておく必要があります。

・床下浸水時に使える公的補償はある?

床下浸水の被害を受けた場合の公的補償ですが、自治体によっては災害の深刻度に併せて助成金などが受けられる可能性があります。
制度は自治体によって様々なので、実際に床下浸水が起こった場合には、お住まいの地域のホームページから問合せ窓口に確認をとってみてください。

床下浸水後の処理・手順の3ステップを紹介

床下浸水後の処理は、次の手順に従って行います。

  1. 排水をする
  2. 乾燥させる
  3. 消毒をする

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.排水をする

床下浸水時に、まずやることは「排水」です。床材や畳などを外し、床下の状況を確認しましょう。侵入した水量が少ない場合は、自宅にあるバケツなどで水を汲み出してください。水量が多い場合は、手作業ではなく、工事用の排水ポンプを利用すると手早く排水をおこなうことができます。

2.乾燥させる

排水が完了したら、次に床下を「乾燥」させます。天気が良い場合は、自然乾燥させましょう。雨や曇りの場合は、送風機などを使って乾燥させましょう。

なお、早く乾燥させようとして「温風」の扇風機を使用することは避けてください。温風を当ててしまうと、床下に露出している木材が伸縮し反ったりするので、床の歪みの原因の元となります。

3.消毒をする

最後の処理は「消毒」です。床下浸水では、泥水や汚水が家の基礎コンクリートに流れ込んでいることも多く、その中に多くの細菌が含まれています。消毒をしないまま、放置してしまうと、人体にも感染症などの悪影響があるので必ず消毒をおこないましょう。

消毒には「消石灰(しょうせっかい)」を使うことが一般的です。消石灰はホームセンターで販売されているので簡単に手に入ります。消石灰の使用方法は、床下浸水がおこった箇所1㎡あたり1㎏を目安に散布します。また、目に入ると大変危険なので、作業時はマスク・手袋・ゴーグルの着用は必須です。
なお、水害発生時には市町村で消毒剤を配布してくれるケースもあります。

・床下浸水の処理には排水ポンプもおすすめ

床下浸水を自力で処理するなら、排水ポンプの利用も効率的です。水深50cmの浸水をバケツで排水すると45時間以上かかりますが、排水ポンプを使えば約3時間で完了します。スイッチを入れるだけなので手間もかかりません。

ただし、床下浸水の処理に排水ポンプを使う場合は、「汚水用」を選択する必要があります。「清水用」か「腐食性液用」を使うと、砂や小石がポンプの内部に入り込んで故障してしまうので注意しましょう。

排水ポンプは種類によって排水できる水深が異なりますが、床下浸水の処理に使うなら、残水位1mmまで対応できる「低水位排水ポンプ」がおすすめです。他のタイプは水が15mm以上残ってしまうため、最終的に人力での作業が必要になってしまいます。

コンクリートの基礎は排水作業をしないと水がいつまでも残り、建物に大きなダメージを与える可能性があります。作業が1日遅れるだけでもリスクが高まるので、スピードを重視した作業を意識しましょう。

床下浸水の被害を放置してはいけない理由4つ

床下浸水を放置しておくと、住宅や健康面に深刻な被害を及ぼします。どのような被害が発生するのか、詳しく見ていきましょう。

1.住宅の劣化

浸水した床下には湿気が溜まるため、カビなどの菌が繁殖して住宅の劣化を招きます。鉄筋コンクリート造りの家も湿気の影響で建物が劣化するため、確実な処理が必要です。

2.シロアリの発生

床下の湿気はカビだけではなくシロアリも引き寄せます。シロアリが床下に巣を作ってしまうと、柱や天井裏にまで被害が広がり、住宅全体の耐久性が低下してしまいます。

3.健康被害

床下に流れ込んだ水には、生活排水や下水が含まれている恐れもあります。このような汚水を放置すると感染症などの健康被害につながるので注意が必要です。

4.漏電事故

床下に配線が通っている場合は、浸水が漏電事故を引き起こすこともあります。

床下浸水対策グッズ3選

対策グッズを使えば、床下浸水を防ぐことも可能です。ここでは、常備しておきたい床下浸水対策グッズを3つご紹介します。

・床下浸水対策テープ

ドアや窓からの浸水対策には、貼るだけで済む防水テープがおすすめです。価格の相場は2,000円から5,000円になります。浸水対策テープは粘着力が強いので、シール剥がしも合わせて用意しておくと安心でしょう。

・吸水土嚢

高吸水性ポリマーを使用した土嚢です。水に浸して3分ほど放置するだけで、400gの麻袋が20㎏の土嚢に変わります。使用後は15日前後陰干しするだけで、ほぼ元の大きさに戻ります。価格の相場は10枚セットで12,000円ほどです。

・止水版

突然の浸水対策に役立つグッズです。1枚当たり2.3Kgと軽量なので、スピーディーに設置できます。工具不要で組み立てられる、扱いやすさも魅力です。費用相場は3枚で20,000円前後です。

床下浸水の処理を業者に依頼した時の費用相場

床下浸水後の処理を業者へ依頼する際の相場は、1㎡あたり約1,500円~2,000円が相場となっています。

床下浸水がおこった場合は前述のとおり、個人で作業をすると大幅に労力も時間もかかってしまいます。また、処理に不手際があると、その後の生活にも影響をきたすため、処理方法はよく検討してください。

なお、床下浸水後の処理に加えて、同時にシロアリ消毒・防カビ消毒をおこなう場合は別途費用がかかります。

床下浸水後の処理1㎡あたり約1,500円~2,000円
シロアリ予防1㎡あたり1,000~2,000円
防カビ消毒1㎡あたり2,000円~4,000円

まとめ

床下浸水の定義から、処理方法、各制度について解説してきました。

床下浸水は普段の生活でも起こる可能性がありますが、近年突然訪れる台風や豪雨でも発生します。処理方法は、排水、乾燥、消毒の3工程ですが、汚水や泥水による感染リスクもあるため、必要に応じて業者を利用してください。

個人で処理するよりも費用負担が大きいですが、今後も長く住み続ける住宅です。安心して普段の生活が送れるように、最善の選択をしましょう。また、浸水時は自治体の報告や火災保険の適用なども、きちんと確認してください。

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